愛知県豊田市惣田町で、第4回教習会が行われました。豊田市と聞くと、平野の自動車工業地帯を連想されると思いますが、豊田市は広く、東側の6割近くは山間地域であり、人工林の山々が連なります。中でも惣田町は、山の山の山の奥です。さらに奥の岐阜県との県境近くに、小渡(おど)温泉があります。
24日午後の下準備のため、東京から車で向った指導員1名は、待合せ時刻より2時間半前に現地に到着したため、周辺の山々を県道沿いに走り、放置された人工林が延々と続くのに驚きました。
受講生は、ボランティア団体「とよた旭 七森会」の面々4名です。その他に、他団体を含む15名以上の方々が、見学・協力者として参加されました。これらの方々は、放置人工林と悪戦苦闘されて来ましたが、圧倒的に広い対象に対処するため、マッシュプーリー木材搬出システムの導入を検討しています。作業道を作ると必ず崩れるとの考え(経験)から、作業道を極力作らず搬出できる本システムに期待を寄せています。
今回も新たな地、愛知県での教習であったため、現場の下見、配置計画、機材の設置が、全てぶっつけ本番でしたが、事前にHPをご覧戴いていたため、飲み込みが早く、スムーズな教習となりました。特に、梅雨前線が停滞する中で、作業中、曇りがほとんどであったことは、奇跡的でした。
現場は、農道脇から急斜面(傾斜約50度)が立ち上り、約10m上に小段の平場(幅8mほど)があるものの、そこから上は、傾斜30度の斜面が続きます。このため、材の搬出は、傾斜30度の斜面を50m下した後、小段上で90度曲進し、30m平走させることにしました。材は小段上から下すことになりますが、10m下の農道に転がし落すことにしました。農道も狭く、適切なアンカーが取れないことから、安全を考慮した判断です。尚、小段面にある1mほど段差に対応するため、基本マッシュプーリーを一台設置しました。以上から、搬送距離は全長約80mです。
25日の日中、機材の設置が完了し試運転したところ、支障が発生しなかったため、安全確保の要点を理解して戴くとともに、参加者全員にエンジンの運転経験をして戴きました。さらに、今回の機材配置以外の場合に必要となる基礎技術も覚えて戴きました。また、翌日に行う「横採り」の試行試験も行いました。
25日の夜には、小渡温泉の旅館で、温泉と夕食を戴いた後、4時間の座学を行いました。座学での内容が多岐に亘るため、4時間でも充分とは言えないのですが、熱心に受講戴きました。その後、宿泊することになるため、午前0時まで、林業に関して意見交換を行い、談笑しながら有意義な時間を過ごしました。
最終日の26日には、前日に設置されたままの機材を利用し、マッシュプーリー木材搬出システムを用いた「横採り」の方法を工夫・改善しました。伐採された木材の多くが、直径20cm程度の比較的細いものであったため、荷掛けの簡単な竹用マッシュキャップを主に用いました。「横採り」は散乱した木材を搬送ライン上に集めるもので、マッシュプーリー木材搬出システムの駆動力を利用し、キャップを付けた木材がライン上に容易に集められるようになりました。搬器を谷側へ引っ張るものの、材自体の「横採り」を上げ荷方向に行うと、斜面上でも安全性が高いです。
ライン上に集めた材を、竹用マッシュキャップで搬送したところ、材が引かれる方向によっては、一旦キャップが外れるものの、直ぐにキャップが再装着され、正常に搬送されることが分かりました。これは、キャップを傷めることもなく、驚きの成果です。
急な斜面を暴れながらも正常に搬送される木材を見て、参加者の驚き感激する声が聞こえました。
「横採り」を含め、搬送スピードが速く、安全で、且つ効率的な本システムを大いに納得して戴けました。
今回の教習で、基本技術の習得だけでなく、長年苦労してきた作業内容を共に改善する試みをしましたが、今後の教習会でも実施して行きたいと思います。