この夏、神奈川県相模原市根小屋地区の山林で、広葉樹の極めて重い木材の搬出を行いました。
幹径25cm以上が対象で、中には50cm径のものも多くあり、2mで300kgに達します。
搬出距離も170m(一部50m区間上げ荷、曲進2ヶ所)、マッシュプーリーの設置間隔を平均15mと広くせざるを得ませんでした。このため、材の頭が上がらず、頭にキャップを付けて試行錯誤しながら何とか運んだものの、効率はかなり低く、広葉樹の手ごわさを初めて知りました。
作業は大変だったものの、この経験は貴重なもので、下記の改良に結び付き、平成28年11月10日に
山梨県道志村白井平地区で、改良後の試験を行いました。
①エンジン自体(160cc)は力があるものの、材が重かっため、駆動ドラムにロープを2回巻しても
ロープが滑り、力が発揮できなかった。3回巻にするとロープがドラムから脱線した。このため、
新たに3回巻しても脱線しないようにドラムの形状を変更するとともに、ロープガイドも設けた。
②材の頭が上がらなくても、キャップを付けると重い材が運べることが分ったので、簡単に
キャップが装着できるように工夫した。キャップの形状・仕様を変更するとともに、キャップ
装着時に材の頭を容易に上げる方法を考案した
(動画マニュアル、4. 重い木材へのロープ掛け、参照)。
キャップ(マッシュキャップ)を積極的に利用するとマッシュプーリーの設置台数を減らす
ことができ、直進のみの場合にはキャップと可逆駆動装置のみの最も単純な機材構成となる
(基本機材配置、その2、参照)。搬器は小型搬器を利用する。
試験結果は良好で、直進のみの場合にはお勧めです。パワーアップしただけでなく、
「設置が簡単」で「下げ荷」もでき、「キャップが自動返送」されるのも魅力です。
機材一式の値段も100万円程度となり、マッシュプーリー木材搬出システム導入の初期段階には特に推奨される機材構成です。
将来は、曲進滑車を通過できる中型搬器を使い搬出距離を伸ばし、マッシュキャップを用いた
完全仕様へと移行できます。このシステムでは、マッシュプーリーが曲進用滑車として利用されます。
追記:相模原市では毎年2万m3の間伐が行われていますが、搬出されるのは2千m3に留まっている
そうです。床材や家具材に利用したいものの、適当な搬出手段が無いのが主な理由です。
林道を極力増やさず、効率的に木材を搬出できるマッシュプーリー木材搬出システムに期待が
寄せられています。