トラブル防止 曲進用マッシュプーリー
曲進が上手くできないことが散見されますので、ここでは、曲進の基本原理を解説するとともに、
正常な曲進と曲進できない場合に分けて、理解を戴きたいと思います。
曲進の基本原理
搬器は、搬器用のメインロープにワイヤーで繋がれ、木材に掛けた荷掛けロープを引張ります。
搬器が直線上を移動する時には、搬器のワイヤ-は
重力方向の真下を向いています。
搬器のワイヤ-が曲進用マッシュプーリーに近づくと、ワイヤ-を誘導するガイド(円弧状の太い鉄棒)に触れ、ワイヤ-が横に倒されます。これにより、
ワイヤ-は、対向する曲進用マッシュプーリーの滑車の間に入り、曲進用マッシュプーリーを通過します。
ワイヤ-の正常な接近
左の写真のように、ワイヤ-が正常に接近すると
メインロープの真下にあったワイヤ-が円弧状の太い鉄棒に触れ、横方向に移動します(この場合、右側に移動)。
この時、材の重さで、曲進用マッシュプーリーの
口(この場合、右側)が下に傾くと、より容易に
通過し易くなります。
正常な通過
ワイヤ-が対向する滑車の間に入り、
曲進用マッシュプーリーを通過します。
異常な接近
搬器のワイヤ-が円弧状の太い鉄棒に触れても、メインロ-プの真下を向いたまま、あるいは異常な方向(この場合、左側)にあると、ワイヤ-は対向する
滑車の間に入ることができません。
このような状態は、搬器のワイヤーが
曲進用マッシュプーリーにぶら下がった状態にならない時に発生し易いです。
トラブルの状態
ワイヤ-が異常な状態で接近すると、
左の写真のように、ワイヤ-が下側の滑車に
乗り上げ、通過できず、さらに進むと、搬器と曲進用マッシュプーリーが激突します。
トラブルが発生し易い状況と回避方法
ワイヤ-が通過できるかどうかは、機材を設置した段階で、搬器をゆっくり動かし、ワイヤーが接近した
状態でエンジンを停止して、ワイヤ-の状態をチェックすれば判断でき、トラブルを未然に防げます。
トラブルが発生し易い場合を挙げれば次の通りです。
①搬器で運ぶ荷が軽い場合 : この場合、曲進用マッシュプーリーにぶら下がる重さが軽く、ワイヤーの
正常方向への移動が不十分となることがあります。搬器のみを山側に返す場合がこれに当りますので、
搬器に重りを付加すると良いです。
②曲進用マッシュプーリーの設置高さが低い場合 : この場合、搬器が曲進用マッシュプーリーに充分
ぶら下がることができないため、ワイヤーの異常接近が発生し易くなります。通常、曲進用マッシュプーリー
の設置高さは、1.2m程度を推奨していますが、1.5m程度に高くする対応が考えられます。
③材と搬器を繋ぐ荷掛けロープが長い場合 : この場合も、搬器が曲進用マッシュプーリーに充分
ぶら下がることができなくなります。搬器とワイヤーが、長い荷掛けロープで水平方向に引張られ、曲進用
マッシュプーリーにぶら下がることができなくなるためです。
荷掛けロープを短くするか、曲進用マッシュプーリーの高さを高くする等の対策を取ります。
④補助ロープを使い曲進用マッシュプーリーを2点で支持する場合 : この場合、搬器が接近すると、
曲進用マッシュプーリーの高さが異常に低下することがあるので、1.2mの高さは常に維持されるように、
曲進用マッシュプーリーに「支え棒」を付けます(トピックス、2020/5/12~14 第3回教習会参照)。
⑤曲進時に異常な振動が発生する場合 : 曲進用マッシュプーリーが不安定な状態が発生する場所に設置され
ると、曲進用マッシュプーリーが異常な動きをし、ワイヤーが正常に移動できなくなります。他の設置方法が
選択できない場合には、搬器をゆっくり動かし、異常な振動の発生を極力抑えます。
曲進用マッシュプーリーの改良
曲進用マッシュプーリーの口側が水平方向にあるよりも、下側に傾けた方が、搬器のワイヤーが通過し易くなります。つまり、①搬器円筒金具の下側に隙間ができ、②ワイヤーの移動すべき角度も小さくなり、通過が容易になるためです。これは、搬器のメインロープの重心が、対の滑車の内、上側の滑車に重心を移動すると理解
することもできます。
そこで、次の写真のように、曲進用マッシュプーリーに重りを付加し、曲進用マッシュプーリーの口を下に
傾けることを提案します(この有効性は、令和4年10月8日実施の現場試験(愛知県豊田市惣田町)で実証されました。) 特に、空荷の搬器を返送する際にトラブルが発生し易いため、この改良が有効になります。
尚、水平とは、重力に対して直角方向を意味します。
重りとして 2.0kg、1.0kg、0.5kg の3種を用意しています。
傾ける角度は、10~15度が適当です。
以上から、曲進用マッシュプーリー設置の要点は、次のようにまとめられます。
①メインロープを張り、重りを付けない状態で、曲進用マッシュプーリーが水平、または口側が水平線より
下側になるように、曲進用マッシュプーリーを設置する。
②重りを吊るし、水平線より10~15度、口側が下を向いた状態にする。
③曲進角度が小さい場合(例えば10度以下)でも、曲進用マッシュプーリーを利用する。
曲進角度が小さいと、メインロープから受ける横方向の力が小さくなるため、曲進用マッシュプーリーは
下を向くようになり、重りなしでも、搬器が通過し易くなります。
注)曲進用マッシュプーリーの口側が、水平線より上方にあると、曲進は難しくなります。
搬器のワイヤーは、常に下(重力方向)を向いて曲進用マッシュプーリーに近づくことに、ご留意
ください。
重りを吊るすためのフック(アイボルト)
重りなしの状態
曲進マッシュの口側が、ほぼ水平方向を向いている。
重りを付けた状態
(この場合、張力200kg、曲進角度90度、重り2kg x4個)
曲進マッシュの口側が、水平方向より10~15度、
下側を向いている。
【 開発 】
有限会社 ラボコスタ 代表取締役 香取 完和
〒142-0053 東京都品川区中延2丁目9番2号北村ビル1階
Tel: (03) 5751-6821
E-Mail:katori@office.email.ne.jp
【 協力 】
株式会社リトル・トリー 代表取締役 大野 航輔
〒402-0200 山梨県南都留郡道志村岩瀬6889-2
Tel:(090)6111-0304
E-Mail:bobkosuke0325@icloud.com
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