ご挨拶
有限会社 ラボコスタ 代表取締役 香取 完和
株式会社 リトル・トリー 代表取締役 大野航輔
・我が国は、世界第3位を誇る森林国です。にもかかわらず、世界第1位の木材輸入国なのです。
・国産材を積極的に使用してこなかった結果、毎年、花粉症で苦しんでいる人が多く見られます。また、国内で、間伐整備が必要な森林面積が1,000万ha(320kmx320km)に達しています。これは関東地方の3倍強の面積で、全国土面積の1/4に当ります。その一方で、世界規模で見れば
大規模な伐採が行われている地域もあり、地球環境に大きな影響を与えるまでになっています。
さらに、近年、再生可能エネルギーのひとつとしてバイオマスが注目されていますが、我が国では、木質バイオマス発電所の燃料不足が既に発生しており、燃料用木材(チップ)も海外に依存している弊害が出ています。
・このまま日本の森林を 放置すると、日光が遮られ、下草が生えず、表土が雨で流出し、川や海が濁ってしまいます。また、「全山的な山崩れ」、「山火事」が多発すると考えられます。さらに、満員電車状態の木々の中で
負けて枯れた木が増え、近い将来、山は「山枯れ」した風景に変貌するものと予想されます。現に、台風が来襲するたびに、倒木の被害が報告されています。
・以上から、日本の森林の間伐を行い山の環境を守るとともに、建築資材、あるいはエネルギー資源として活用
すべきと誰でも思うところですが、そのためには多くの課題があります。
・課題のひとつが搬出コストです。日本の山は急峻で複雑な地形が多くを占め、効率の良い大型機械が入れない
ところが多く、人手の掛かる割高な作業が必要なのです。
・特に、切った木を作業道まで運び出す「搬出作業」に大きな手間が掛り、コスト高の主因ともなっています。
・マッシュプーリー木材搬出システムは、この搬出労力の軽減を図るべく開発されたもので、我が国特有の急峻で複雑な地形に対応できるとともに、安全で効率的な木材の搬出に寄与する、シンプルで利用し易い、新しいシステムです。
2022/12/2,3 第5回教習会(神奈川県横浜市)
今回の教習会は、東京品川からほど近い横浜市青葉区で行われました。これまで、愛知県、
三重県、福岡県、等で行われたことを思い出すと、近くで開催できるのは、とても楽なことに
感じます。
受講者は、川崎市内で造園業を営む会社(㈱横山造園)の方々でした。社長さんは気さくな方で、
社員の肉体的苦労を低減するため、各種作業機械の導入に熱心に取り組んでおられます。
造園業の方がマッシュプーリーに興味を持って戴くのは初めてでしたので、どのような利用を
考えておられるのかと思いました。お聞きすると、林業に近い仕事内容として、緑地の整備が有る
そうです。川崎市の生田緑地を整備することも委託されており、緑地内には広大な森が広がり、
広葉樹の大木も多く見られます。近年は、温暖化の影響で、ナラやクヌギ等の大木が害虫に冒され
枯れる被害が増え、虫食い木の伐採、撤去に苦労されています。
教習会の現場は、横山造園が所有する青葉区内の倉庫脇で行いました。林内と違い立木が少ない
ので、曲進用マッシュプーリーの設置には人工の支柱を設け、アンカー用ロープで支えました。
末端はおたふく滑車を用いて迂回させ、ロープ式チルホールとでも呼ぶべき、マスダム・ロープ
牽引器(Maasdam Rope Puller)を初めて用いました。ロープ式なので、ワイヤーを使う
チルホールに比べて、扱いはとても楽でした。
また、途中に設置した基本マッシュプーリーも、角材三脚に吊る必要が有りました。
搬送距離は50mと短いものの、搬送した材の最大のものは幹径約50cm、長さ2mの広葉樹で、
造園業のイメージをすっかり変える難物でした。このような難物が、抵抗の大きな砂利面上を曲進
して運ばれたことは、本システムの有効性を示しています。
(曲進用マッシュプーリーの補強を若干行うことになりました。)
座学は1日目の夜に4時間行いましたが、アッという間の4時間で、安全確保の要点を繰返し
説明するとともに、各機材の特性、特に曲進用マッシュプーリーの基本原理と使用方法を深く理解
戴きました。
教習現場には、造園業らしく果樹も植えられており、合間に、ちょっと酸っぱい好みのみかんを
頂戴しながら、のどかに、2日間の教習会が終了しました。
2021/12/19 A材(建築用材)の搬出(愛知県豊田市 七森会)
令和3年12月18日、19日の土日に、愛知県豊田市の「とよた 旭 七森会」の森林環境整備活動に参加しました。当会には、半年ほど前にマッシュプーリー木材搬出システムを購入戴き、A材の伐採・搬出を始めています。
9月~11月にかけ択伐を進め、幹径16~30cm超のA材を200本準備しました。材の長さは、3m、4m、5.5mの3種類です。
地形は農道脇の小段の面積が狭く、傾斜約40度、高さ10mほどの急斜面が接近しています。急斜面を過ぎると、傾斜15度程度の緩斜面が続きますが、100mも登ると頂上に達します。
当地区(惣田町地区)周辺地形の特徴として、小規模な丘がポコポコと分布し、丘と丘の間に農道が走っています。これは、実用最大搬出距離200mのマッシュプーリー木材搬出システムを用いて材を搬出するのに、最適な条件となっています。つまり、新たに作業道を作る必要もなく、丘全体を守備範囲に納めることができます。
機材配置は、農道脇の小段に駆動装置を置き、急斜面基部近くに基本マッシュプーリーを架け、急斜面上端に曲進マッシュプーリーを架けています。ここで、急斜面上端に曲進マッシュプーリーを架けるのは、緩斜面上で搬送ライン方向が5度程度、緩く変化するためです。緩斜面上では80m超の直線となり、末端に末端滑車を置いています。搬送距離の全長は100mです。
さらに、特筆されることとして、次の事項が挙げられます。
① 張力を与えるチルホールを、駆動装置脇に置いている。駆動装置から出る上側メインロープを
横方向に引き込み、2台目の末端滑車(おたふく滑車でも良い)を付けて、チルホールで引っ張る。
これにより、駆動装置のドライバーが、張力の管理も容易に行うことができる。
(この時、メインロ-プには、付加した滑車からの内部抵抗が増えるので、抵抗の少ない滑車を
適切に設置する必要が有ります。)
② キャップ(スキッダーコーン)の材への取り付けは、従来の方法を変更し、荷掛けロープのみを
用い、荷掛け時間を短縮する。荷掛けロープには、キャップが外れるのを防ぐ金具が付いており、
金具をキャップの口元に寄せることができる。
③ 急斜面を下す際には、材の尻尾側に別ロープを結び、このロープの動きをポータラップで支える
ことにより、急斜面を下る材の動きを安定化させる。
④ 小段上の面積が狭く、駆動装置で材を最終地点まで牽引できないため、急斜面直下まで下した
材を、三角ハンドウインチで8mほどさらに牽引した後、小段下の最終集積地に転がし落す。
⑤ 2台のキャップを用い、材が急斜面直下まで下された時点で、空の状態で待機していたキャップ
を山頂側に返送し、三角ハンドウインチで牽引する間のタイムロスを無くす。
順調な搬送状態にするのに2日を要したそうですが、購入して日の浅い機材であることを勘案すれば、搬送時の効率の高さには驚かされる。作業に慣れた頃には、1時間ほどの間に、太くて長い材を10本程度すんなり搬送し、正味4時間の作業で30本ほどに達しました。
現場の方々の応用力は高く、努力と熱意に強く感心しながら、帰路に就きました。
2020/7/24~26 第4回教習会(愛知県豊田市)
愛知県豊田市惣田町で、第4回教習会が行われました。豊田市と聞くと、平野の自動車工業地帯を連想されると思いますが、豊田市は広く、東側の6割近くは山間地域であり、人工林の山々が連なります。中でも惣田町は、山の山の山の奥です。さらに奥の岐阜県との県境近くに、小渡(おど)温泉があります。
24日午後の下準備のため、東京から車で向った指導員1名は、待合せ時刻より2時間半前に現地に到着したため、周辺の山々を県道沿いに走り、放置された人工林が延々と続くのに驚きました。
受講生は、ボランティア団体「とよた旭 七森会」の面々4名です。その他に、他団体を含む15名以上の方々が、見学・協力者として参加されました。これらの方々は、放置人工林と悪戦苦闘されて来ましたが、圧倒的に広い対象に対処するため、マッシュプーリー木材搬出システムの導入を検討しています。作業道を作ると必ず崩れるとの考え(経験)から、作業道を極力作らず搬出できる本システムに期待を寄せています。
今回も新たな地、愛知県での教習であったため、現場の下見、配置計画、機材の設置が、全てぶっつけ本番でしたが、事前にHPをご覧戴いていたため、飲み込みが早く、スムーズな教習となりました。特に、梅雨前線が停滞する中で、作業中、曇りがほとんどであったことは、奇跡的でした。
現場は、農道脇から急斜面(傾斜約50度)が立ち上り、約10m上に小段の平場(幅8mほど)があるものの、そこから上は、傾斜30度の斜面が続きます。このため、材の搬出は、傾斜30度の斜面を50m下した後、小段上で90度曲進し、30m平走させることにしました。材は小段上から下すことになりますが、10m下の農道に転がし落すことにしました。農道も狭く、適切なアンカーが取れないことから、安全を考慮した判断です。尚、小段面にある1mほど段差に対応するため、基本マッシュプーリーを一台設置しました。以上から、搬送距離は全長約80mです。
25日の日中、機材の設置が完了し試運転したところ、支障が発生しなかったため、安全確保の要点を理解して戴くとともに、参加者全員にエンジンの運転経験をして戴きました。さらに、今回の機材配置以外の場合に必要となる基礎技術も覚えて戴きました。また、翌日に行う「横採り」の試行試験も行いました。
25日の夜には、小渡温泉の旅館で、温泉と夕食を戴いた後、4時間の座学を行いました。座学での内容が多岐に亘るため、4時間でも充分とは言えないのですが、熱心に受講戴きました。その後、宿泊することになるため、午前0時まで、林業に関して意見交換を行い、談笑しながら有意義な時間を過ごしました。
最終日の26日には、前日に設置されたままの機材を利用し、マッシュプーリー木材搬出システムを用いた「横採り」の方法を工夫・改善しました。伐採された木材の多くが、直径20cm程度の比較的細いものであったため、荷掛けの簡単な竹用マッシュキャップを主に用いました。「横採り」は散乱した木材を搬送ライン上に集めるもので、マッシュプーリー木材搬出システムの駆動力を利用し、キャップを付けた木材がライン上に容易に集められるようになりました。搬器を谷側へ引っ張るものの、材自体の「横採り」を上げ荷方向に行うと、斜面上でも安全性が高いです。
ライン上に集めた材を、竹用マッシュキャップで搬送したところ、材が引かれる方向によっては、一旦キャップが外れるものの、直ぐにキャップが再装着され、正常に搬送されることが分かりました。これは、キャップを傷めることもなく、驚きの成果です。
急な斜面を暴れながらも正常に搬送される木材を見て、参加者の驚き感激する声が聞こえました。
「横採り」を含め、搬送スピードが速く、安全で、且つ効率的な本システムを大いに納得して戴けました。
今回の教習で、基本技術の習得だけでなく、長年苦労してきた作業内容を共に改善する試みをしましたが、今後の教習会でも実施して行きたいと思います。
2020/5/12~14 第3回教習会(福岡県北九州市)
福岡県北九州市小倉で、第3回教習会が行われました。新型コロナ禍の中ですが、コロナに対して、林業が最も安心とも言われており、感染対策を講じつつ、実施しました。ガラガラの高速道路とサービスエリアを2日掛りで抜け、指導員1名が東京から小倉に向いました。
受講生は、一般社団法人 森人未来ノ研究所の方々5名です。まだ、組織化されて1年に満たないものの、過去3年間議論を重ね、竹藪の整備と竹の有効利用を目指す有志の面々で、関係者は10名を越えます。
今回、新な地、九州での教習会であったため、事前に機材がセットされた通常の教習会とは異なり、現場の下見、機材配置計画、機材の設置が、全てぶっつけ本番。心配したものの、やってみると、受講生の理解も良いようでした。
現場は、基本的には平らで、搬送距離100m、曲進1ヶ所(90度)の比較的平易なものの、段々畑であった竹藪内の搬送ライン上には、ふたつの段差(1~1.5m)があり、切り株が支障となったため、コンパネを段差の斜面に並べました。また、段差を全竹7本上げるには、角材三脚の補強が必要になったため、本数を減らし、3~5本の搬送にしました。
一方、一番苦労したのは、曲進でした。上手く行かない原因は、竹の頭と搬器までの距離が長過ぎたためです。この距離が長いと、搬器を吊っているワイヤーが下を向かず、水平方向にかなり傾いてしまいます。竹用キャップを束ねるオープンスリングベルトを150cmから90cmのものに替えるとともに、距離が短くなるよう、オープンスリングベルトの使い方を工夫しました。
また、上記の改善により、曲進に支障は生じなくなったものの、曲進滑車を支えるアンカーとメインロープが長く、材通過時に曲進滑車の高さが低くなり、搬器を吊っているワイヤーが水平方向に傾き易いので、今後、写真のような支え棒を付けることが有効と考えられます。この棒は、支えているだけで、地面に打込む必要は有りません。
2日目夜の座学4時間と、3日目の受講生主体の設置・搬送・撤去と、無事、終了しましたが、トラブルが有ったことは、教習会としては、とても有意義でした。
本団体との雑談の中で、住民の自治意識の回復が、最も大きな課題であると、互いに頷きました。本団体のメンバーはまだまだ若く、今後の活躍が期待されます。
曲進滑車を支える棒(金具で曲進滑車と連結されている)
2019/8/7,8 第2回教習会(千葉県長南町)
福岡県朝倉郡東峰村から2名の受講者を迎え、第2回教習会を、令和元年8月7日、8日に、千葉県長生郡長南町の杉林で行いました。
東峰村は福岡県の中南部に位置し、2005年に小石原村と宝珠山村が合併して誕生した、人口2千人ほどの村です。小石原焼の窯元を50軒ほど有し、陶芸が盛んです。「日本で最も美しい村連合」にも加盟しています。
残念ながら、東峰村を有名にしたのは、2年前の九州北部豪雨でした。記録的な時間雨量100mmが7時間続き、1日で1年分の雨が降り、斜面崩壊・土石流・河川氾濫災害により3名の方が亡くなりました。森林環境整備が遅れていることも、被害を拡大した要因のひとつと考えられています。
受講者は、森林環境整備を進めるとともに、優良材の出荷で村の活性化を図ろうとする自伐林業の若者で、「フラワーズ」と称する8名ほどのグループに所属しています。山の斜面は崩れ易く、作業道を極力作らず木材を搬出できる本システムに期待を寄せています。正に、村の存亡が懸っています。
8月7日、8日の長南町は、台風の影響もなく真夏の暑さで、気温が35°を超えましたが、恒例の超大玉スイカの休息は好評で、和とやすらぎを与えました。
8月7日は、事前にセットされた機材の説明から始まり、搬出を見学戴くとともに、作業手順を覚えました。夜の座学は、予定の3時間を超え、5時間近くに及ぶ白熱授業でした。
8月8日は、受講者が主体となり、1からシステムをセットし、搬出作業を行いました。周りから適切なアドバイスを受けながら、搬出作業が順調に進んだため、ラインから離れた材も「横採り」して、間伐した材の全てを運び出してしまいました。
人力の大変さを知るため、幹径25cm、長さ6m超の材を8人がかりで運び出してみましたが、傾斜20°の斜面を引き上げるのは、1回が限界と痛感しました。
2019/7/11 竹の搬出における荷掛け作業の効率化
竹は、木材に比べて軽いものの、同じ重量を搬出する場合には搬出本数が多くなります。
搬出本数が多い場合、荷掛け作業に手間取ると効率的な搬出ができません。
そこで、荷掛け作業の効率化を図りました。
実証試験を行った現場は、1年前と同じ、千葉県長柄町の竹林です。
長引く雨の日が続く中、7月11日は、日中、雨も降らず、作業し易い天候でした。
これまでの経験から、次のことが分かっていました。
① オープンスリングベルトを用いると、竹に一回巻くだけで、ベルトが竹にしっかり密着し
ズレない。
② 複数の竹の頭を揃え、束ねて一つのキャップに固定するのは大変である。
そこで、竹の一本づつに、小型のキャップを付けるとともに、幅の狭い、薄手の
オープンスリングベルト(幅2cm、長さ1.5m)で、竹と小型キャップを連結することにしました。
小型キャップは、一般工事の標識用キャップで、2枚を重ねて、補強しました。
各オープンスリングベルトにはカラビナが付けられており、カラビナが小型キャップのズレを
防止するとともに、別のオープンスリングベルトでカラビナを結び(束ね)、搬器(中型搬器)に
連結されます。(その後、改良され、小型キャップが竹の頭からズレないように、オープンスリングベルトに固定金具を取付けました。取り外しも簡単です。)
搬送試験結果は上々で、一度に6本の竹を運び、3時間半で110本(約5トン)を搬送しました。
8本の竹を運んでも問題はありませんでした。竹林内での作業性のため、竹の先端部は切り離し
ましたが、先端部も2本を一つのキャップに挿入し、同様の作業で搬送できました。
尚、搬送距離は50mです。
この荷掛け方法は、幹径が20cm以下の細い木材を運ぶ場合にも有効と考えられ、細い木材を
効率良く大量に運ぶ手段となります。
2018/7/21 千葉県長柄町での竹の搬出作業
千葉県長生郡長柄町は千葉県のほぼ中央に位置し、小高い丘の合間に田畑が広がる。素朴な風景の農村地帯ですが、丘には竹が繁茂し、竹藪と化しているところが多い。千葉県全体でも竹への対処が大きな課題となっています。
NPO法人「竹もりの里」では、ここ8年、竹林整備活動を行って来ましたが、幹径15cmを超える孟宗竹が乱立し、人力では手におえない状況から、マッシュプーリー木材搬出システムを導入し、作業の効率化を図ろうとしています。
今年の夏は特に暑く、高さ20mにも満たない丘を登るだけでバテてしまい、作業の機械化は必須の状況です。
7月21日は15名ほどの関係者が集まり、距離約100mの搬送作業を行いました。搬送区間の地形はM型の断面であるため、ふたつのピーク地点に基本マッシュプーリーを設置するとともに、一方のピーク地点で約30°曲進させました。
駆動装置を設置した麓側の広場に2トントラックを乗り入れ、駆動装置のアンカーとしました。
また、山の奥側で末端滑車に張力を与えた場合、常に山の奥まで登り張力の監視・維持が必要になり、大変な労働となります。そこで今回は、末端滑車のアンカー地点に固定滑車を設置し、この固定滑車に別系統のロープを掛け末端滑車を引張り、麓に近い地点で張力を与えることにしました。映像の中で、青色のロープ(スタティックロープ)が張力を末端で迂回させたロープです。さらに、M型地形の凹地点では、メインロープが頭上はるか5m上空になってしまい、マッシュキャップが地面に着かず作業できないので、中型搬器とマッシュキャップの間に「荷下げ滑車」を装着し、上空の中型搬器からマッシュキャップがロープで下りて来るようにしました。
映像に見るように、目標とした全竹3本(計160kg超)が楽に搬送され、終点の広場に到着しています。竹林内では、アンカーや機材を支持するための竹が豊富に点在しているので、ルートの選定も比較的容易でした。また、基本マッシュプーリー等を竹に吊る際には、ロープではなく、リング状のスリングベルト(オープン スリング)を利用するのが便利で、竹に巻くだけで滑り落ちません。
昼には搬出した青竹を活用して現場で「そうめん流し」を行い、器や箸も青竹で手作り。10時と3時には大きなスイカを皆で戴き、しばし暑さを忘れ和やいだ。このような余興も現場ならではです。
尚、「竹もりの里」では、広場に集めた竹を、簡単な方法で炭にし(広場で)、炭を田畑等に撒き、土壌のアルカリ化(中和)を進めています。また、竹を粉砕したものを畑に撒くだけでも、野菜の味が甘くなるそうです。
2018/2/18 三重県紀北町での搬出作業
三重県牟婁郡紀北町は、紀伊長島で有名な観光地である。海岸線には風光明媚な島々が点在し、漁師街の居酒屋では地元産の魚料理が美味い。磯釣りでブリが釣れると言うから驚きである。しかし、平地が狭く、ちょっと車で奥に向うと急傾斜の山々が連なる。
マッシュプーリー木材搬出システムを導入戴いた「きほく自伐林業倶楽部」では、森林環境整備とともに優良材の出荷を目的として活動を進めている。
今回、導入初期であることもあり、幹径20cm程度、長さを2mにした材を搬出した。
材は比較的軽いものの、平均斜面勾配は25度を超え、曲進1ヶ所(角度約20度)、搬出距離全長100m、特に、搬出出口は傾斜60度、高さ5m強の崖(2段)であり、難易度の高いものでした。5mの崖2段をそのまま下すため、基本マッシュプーリー2台を角材三脚に吊るして設置しました。
搬送距離が長く、曲進用マッシュプーリー両端のメインロープも長くなるため、曲進用マッシュプーリーの動揺を抑えることに苦心しましたが、曲進用マッシュプーリーの上下滑車をロープで連結するとともに、空荷時の搬器の安定を保つため、間伐材で作った重りを搬器に付加しました。
映像は、山側の搬出作業を終え、曲進用マッシュプーリー~麓側の材を搬出している場面です。映像に観るように、急傾斜でもエンジンブレーキが自動的に効き、心配された崖でも上手く材が下ろされています。
2017/9/9,10 第1回教習会(千葉県山武市)
マッシュプーリー木材搬出システムの購入・使用に際しては、各団体2名以上の教習会受講を義務付けさせて戴いておりますが、平成29年9月9日、10日に千葉県山武市で一泊二日の教習会が開催されました。教習会は運転免許を与えるもので、5名が受講されました。
三重県から2名、千葉県から2名、東京都から1名を迎え、皆さん熱心で気さくな方ばかりで、
正味15時間のハードな授業を楽しく行うことができました。
教習内容は、安全管理を基本とした機材の理解・使い方、維持・管理に及び、現場での機材の理解と実習に11時間、座学が4時間です。天候にも恵まれ、山の中でおやつに食べたスイカやアイスクリームは和やかな雰囲気を盛り上げました。
三重県は急傾斜地が多く、下げ荷で木材を搬出したいこと、千葉県では竹が繁茂して竹藪となっており、その整備・利用をしたいこと等、各地域の情報交換にもなりました。
千葉県山武市に急傾斜地は少なく、何とか10°程度の現場(搬送距離70m)で許して戴きましたが、
三重の山奥にも伺ってみたいと思いました。
竹の搬送試験も行い、竹藪内は伐採した竹の切り株が乱雑に広がりますが、マッシュキャップを装着することにより対応できる目途が立ちました。映像の竹は、長さ4.8mが6本(計90kg)です。
教習会の開催にご協力戴いた、一般社団法人キュア・フォレストの方々にもお礼申し上げます。
2017/7/14 2連のマッシュキャップを用いた搬出
マッシュキャップを用いるとマッシュプーリーの設置台数を減らすことができ、機材の設置が簡単
なだけでなく、機材購入費もかなり低減されます。今回、マッシュキャップを2連にして、搬出効率
をさらに上げました。2連のマッシュプーリー、駆動装置、曲進用マッシュプーリー1台(曲進角90°)、搬出距離約50m。搬出した1回当りの木材は、2mもの4本計で約300kgです。
曲進用マッシュプーリーの改良をさらに行ったので、非常に滑らかに搬器が曲進します。メイン
ロープが脱線する心配もありません。搬器は2点で吊る中型搬器を用いているので安定性が良く、
超小型搬器に較べメインロープへの負荷も低くなっています。
作業を実施した千葉県山武市の気温・湿度は共に高く、作業環境は過酷でしたが、搬出効率の良さ
と安定性の高さのお陰で、気分の良い作業となりました。
今回の曲進用マッシュプーリーの完成により、「基本機材配置」に示された「フルスペック」仕様
と「マッシュキャップ」仕様が統合利用できるようになりました。
2017/6/2 曲進用マッシュプーリーを用いた搬出
マッシュキャップと駆動装置のみを用いた搬送システムで曲進したい場合、これまでの曲進滑車が
使えないため、新たに曲進用マッシュプーリーを開発しました。
曲進用マッシュプーリーは、これまでのマッシュプーリーを曲進用に改造したもので、
マッシュプーリーの底に付けられたロープガイド用の鉄製ヒゲの形状が異なるものです。
これまでの曲進滑車をも代用できるだけでなく、次の利点を有します。
① 鉛直力を分担しない曲進滑車では、近傍にマッシュプーリーを設置して曲進滑車を補助する
必要があったが、曲進用マッシュプーリーでは鉛直力も分担するため、単独で機能する。
② 曲進滑車では、メインロープを単純に水平方向に引っ張っていたため、メインロープが外れる
可能性があったが、曲進用マッシュプーリーでは、メインロープを片持ち滑車内に抱え込むため、
原理的に、メインロープが外れる要素がない。
6月2日に、千葉県東金市の林内で検証試験を行いました。ここも平らな東金市とは言え、
搬送した木材は水分を多く含む杉材で、重量200kg(4m)に及ぶ、そこそこの難物です。
用いた搬器は、マッシュキャップシステムでの曲進に適した「超小型搬器」と「中型搬器」です。
超小型搬器は、メインロープに1点で接合した最も単純な搬器で、中型搬器は、2点で接合する
とともに、重りとしての鉄棒が付いています。
さらに、今回の工夫として、かなりの労力となる「横採り」作業を楽にするため、低コストの
「三角ハンドウインチ」も開発しました。アンカーは作業員自らの体重で、足元部に鉄杭2本を
打ち込みます。特別なアンカーが不要なため、設置場所を選びません。
試験結果は上々で、横採り地点でマッシュキャップをセットされた材は、メインロープライン下
まで運ばれた後、メインロープの搬器に寸時で取り付けられ、曲進しながら効率良く搬送されます。
「新たな手法で、安全、低コスト、効率良く木材を搬出」を実現しています。
2016/11/10 キャップと可逆駆動装置のみによる搬出
この夏、神奈川県相模原市根小屋地区の山林で、広葉樹の極めて重い木材の搬出を行いました。
幹径25cm以上が対象で、中には50cm径のものも多くあり、2mで300kgに達します。
搬出距離も170m(一部50m区間上げ荷、曲進2ヶ所)、マッシュプーリーの設置間隔を平均15mと広くせざるを得ませんでした。このため、材の頭が上がらず、頭にキャップを付けて試行錯誤しながら何とか運んだものの、効率はかなり低く、広葉樹の手ごわさを初めて知りました。
作業は大変だったものの、この経験は貴重なもので、下記の改良に結び付き、平成28年11月10日に
山梨県道志村白井平地区で、改良後の試験を行いました。
①エンジン自体(160cc)は力があるものの、材が重かっため、駆動ドラムにロープを2回巻しても
ロープが滑り、力が発揮できなかった。3回巻にするとロープがドラムから脱線した。このため、
新たに3回巻しても脱線しないようにドラムの形状を変更するとともに、ロープガイドも設けた。
②材の頭が上がらなくても、キャップを付けると重い材が運べることが分ったので、簡単に
キャップが装着できるように工夫した。キャップの形状・仕様を変更するとともに、キャップ
装着時に材の頭を容易に上げる方法を考案した
(動画マニュアル、4. 重い木材へのロープ掛け、参照)。
キャップ(マッシュキャップ)を積極的に利用するとマッシュプーリーの設置台数を減らす
ことができ、直進のみの場合にはキャップと可逆駆動装置のみの最も単純な機材構成となる
(基本機材配置、その2、参照)。搬器は小型搬器を利用する。
試験結果は良好で、直進のみの場合にはお勧めです。パワーアップしただけでなく、
「設置が簡単」で「下げ荷」もでき、「キャップが自動返送」されるのも魅力です。
機材一式の値段も100万円程度となり、マッシュプーリー木材搬出システム導入の初期段階には特に推奨される機材構成です。
将来は、曲進滑車を通過できる中型搬器を使い搬出距離を伸ばし、マッシュキャップを用いた
完全仕様へと移行できます。このシステムでは、マッシュプーリーが曲進用滑車として利用されます。
追記:相模原市では毎年2万m3の間伐が行われていますが、搬出されるのは2千m3に留まっている
そうです。床材や家具材に利用したいものの、適当な搬出手段が無いのが主な理由です。
林道を極力増やさず、効率的に木材を搬出できるマッシュプーリー木材搬出システムに期待が
寄せられています。
2016/2/29 千葉県山武市で搬出デモ (160ccエンジン搭載)
千葉県山武市は平らな台地の上に広がる農村地帯で、「山武杉」は銘木として名を馳せて来ました。誠に平らで、これまで山間急傾斜地で活動して来た者にとって、驚きの平らさです。
マッシュプーリーを導入戴いた千葉大学では、林野庁委託事業「木質バイオマスを活用したモデル
地域づくり推進事業」を進めており、「丸太燃料流通トータルビジネス」を目指しています。
マッシュプーリーは、木材搬出でその一端を担います。
当地域では、平成28年1月から2ヶ所の搬出作業を行いました。ひとつ目が千葉市緑区下大和田地区です。勾配0、残された木々は直線状に整然と並び、マッシュプーリー使用の初心者向けサイトとしてはベストでした。1回の講習を行っただけで、後は「キコリ」と称する地元の若者4、5人が週2回
ほどの搬出を行いました。2月上旬の作業終了日には、搬出距離60mで1時間に4m3の材を搬出
(新記録)するまでになりました。
ふたつ目の現場は山武市板中新田地区で、現場近くには露天風呂を有するオートキャンプ場
(有野実苑、全国人気ランキング6位)があります。この露天風呂には、千葉大学が開発した丸太を
燃料として使用する加温システムが導入されています。当現場では水路を横断しなければならず、
水路上に長さ5mの丸太3本を並べ、その上にベニア板を敷いて固定し、横断用の簡易橋としました。また、竹藪となった林地を迂回するためと、竹藪内も立木が少ないため、櫓10基を設置し
マッシュプーリーを吊るしました。搬送距離は全長100mほど(最大傾斜10度)で、途中80度曲進し、竹藪内の距離は約40mです。
2月29日には40名ほどの見学者を迎え、千葉テレビ、新聞社の取材も受けました。
櫓10基は壮観だったようです。見学会が終了して片づけを終るころ大雨になりましたが、宿舎に帰り
寛ぐころには、千葉テレビのニュースで「マッシュプーリー」の字幕入り映像が流れました。
2015/12/17 山梨県道志村室久保地区で搬出作業
室久保地区の内、10軒ほど立ち並ぶ別荘地の裏山(1ha)が対象の間伐、搬出作業でした。「もう少し光の通る森が欲しい」と別荘主から希望されての事業で、「道志の湯」から500m位、道を登ったところに当ります。10月に間伐を行い、11月~12月に搬出を行いました。
この対象地点の特徴として、搬出口が一ヶ所に限定されることが挙げられます。県境に続く上斜面には道は無く、さらに急斜面となっています。また、近接する県道はあっても狭く、作業および材を
集積するスペースが有りません。何とか一軒の別荘の裏庭を借用させて戴くことにしました。この裏庭にはアンカーとなる立木が無いため、鉄杭を打ち込んでアンカーとしました。それでも、40度近い
斜面を斜めに材を下す必要が有りました。
4m材にして搬出したのも今回の特徴で、これまで2m材も含まれたこととは大きく違います。
搬送距離は100mほど(曲進1ヶ所)で、搬出した最大のものは直径が35cm超あり、重さは230kgに及び
ます。 このような材が50ccのエンジンで運べるのは驚きです。「下げ荷」の利点がフルに活されています。
2015/10/4 山形県大江町で搬出デモ
片道6時間以上を要しましたが、山形県大江町に伺いました(平成27年10月2日~4日)。大江町も森林面積が町の90%を超える山国です。地元周辺では薪の需要が増えているそうで、特に燃焼時間の長い広葉樹の価値が高いようです。乾燥させ薪の形にすると1m3が2万円で売れ、岩手県まで運ぶと3万円にもなるとかで、地元の方々のやる気と元気には驚くとともに、当然とも思われました。
初日(10月2日)は、移動と下見程度で終ってしまい、夜は山中の温泉に浸かった後、麓まで降りて小宴会で寛ぎました。その後、山中に戻り、廃校となった小学校を改修した宿泊施設(やまさぁーべ)に泊まりました。「やまさぁーべ」は方言で、「山さ行くべ」だそうです。山が生活の基盤であった昔が感じられます。
2日目(10月3日)は朝から機材の設置に努め、地元の若者会の協力も戴きましたが、頭をひねる難所が多く、完了しないまま、午後の講演会に向いました。講演会は麓の「やすらぎ会館」で行われ、会場前の広場には薪ストーブの展示や、薪わりコーナが設けられ、参加者は60名を超えました。参加者の質疑も活発で、「町の方々は口が重い」と聞かされていたので、少しビックリしました。夜の大宴会も盛況で、夜中の2時頃まで若者の議論(?)する声が響きました。
最終日(10月4日)、当然、早朝前から機材の設置完了に努力し、朝9時には見学者が来て、クロスプレイでしたが30名を超える方々に見学戴くことができました。搬送距離は70mほどでしたが、傾斜30度の斜面を40m下った後、90度方向転換してから20m平進し、林道に降りる崖をさらに下り、材が林道に軟着陸する様子は、操縦者としても感激でした。地元テレビの取材を受け、少し照れくさい
ものの、晴れやかな気持ちになりました。
【 開発 】
有限会社 ラボコスタ 代表取締役 香取 完和
〒142-0053 東京都品川区中延2丁目9番2号北村ビル1階
Tel: (03) 5751-6821
E-Mail:katori@office.email.ne.jp
【 協力 】
株式会社リトル・トリー 代表取締役 大野 航輔
〒402-0200 山梨県南都留郡道志村岩瀬6889-2
Tel:(090)6111-0304
E-Mail:bobkosuke0325@icloud.com